なぜ遺言が必要なのか

さて、我々税理士も、相続税に関わる仕事をする際には、遺言を拝見させて頂くこともよくあります。遺言があったことで、相続人同士が揉めずに済んだということもあります。それだけに遺言の重要性を認識することが多い訳ですが、その辺のところを、女性弁護士のアンさんにお話を伺ってみたいと思います。

  • まずお尋ねしたいことは、遺言を作成する際に注意すべきことは、何でしょう?

  • 弁護士アンそうですねぇ、まずその目的を明確にすることが必要です。

  • 目的、ですか?誰に相続して欲しい、とか、そういう事ですか?

  • 弁護士アンええ、まぁ、簡単に言うとそういうことですね。遺言で達成したいという目的を持って,そこで初めて遺言を考えて頂ければ、と思います。

  • そうすると、遺言をしておいた方が良い、とアドバイスされるとすると、どんな場合ですか?

  • 弁護士アンあくまで一般論ですが,遺言を作成するのが良いと思われるケースには,内縁の妻に財産を渡したい人や、前妻の子と後妻が相続人となる場合、事業承継が関わる場合、あと、妻と疎遠な兄弟姉妹が相続人である場合などが考えられますが、このような状況ではない方にとっても、自分の亡き後の道筋を示しておき、相続人達が不必要に揉めることの無いようにしてあげるのも、また親心なのかもしれません。

  • なるほど。ややこしいと感じるケースでなくとも、自分が生きていればこうしたいと考えている、という親の志し、「意志」を子に伝えておく、これは重要なポイントですね。次に、遺言の方法が幾つかあると思います。公正証書遺言や自筆遺言など。この点についてはどうですか?

  • 弁護士アン断然、公正証書遺言がおすすめです。

  • やはり、改ざんの可能性がないという点ですか?

  • 弁護士アン改ざんのこともそうですが、そもそも遺言の内容自体が無効だ、という場合は別として、公証人が作成するので、単純な方式の不備により遺言が無効となるリスクはまずない、と言っても良いと思います。

  • なるほど。遺言の方式については公証人にお任せすればよい、と。では、内容が無効かどうかというチェックは、公証人にはして頂けないんですか?

  • 弁護士アン公証人は法律の専門家ですので、法律的に見て、内容面でNGな部分があればチェックしてもらえることは期待できます。しかし、例えば遺言者に遺言能力があるか否か疑われるとき、その場の公証人には判断できないケースがあります。公証人は法律上正当な理由なくその依頼を断ることはできませんので、こんな場合、依頼人に遺言能力はなく、法律上無効となる公正証書遺言が作成されてしまう可能性はあります。

  • なるほど。いや、あって欲しくない事ですが、あるのかもしれませんね。

  • 弁護士アン更に、例え遺言能力がある場合であっても、本当に本人の真意によって作成された遺言なのかが問題となるケースもあります。従って公正証書遺言であっても、その無効を巡って争われることが十分考えられます。

  • 公正証書だから何もかも安心、ということではないんですね。

  • 弁護士アン絶対に効く薬はありません。私達の立場からは、内容が無効とならないかどうかのチェックはもとより、当初予定していた目的を達成出来るかどうか,例えば遺言書に記載された財産の特定が可能なのか、遺留分を侵害してはいないかなど、遺言の作り込みの段階から、是非じっくりと時間をかけて弁護士にご相談頂きたいと考えていますし、その他の事に関しても、司法書士や税理士など、それぞれの分野の専門家に検討して貰うのが良いと思いますよ。

  • 転ばぬ先の杖、ですね。

  • 弁護士アン遺言を残した本人は相続トラブルに口を出せず,やり直しがきかないので,本当に目的を達成できる遺言か否かは,専門家を雇ってでも検討しておくのが良いと思います。後から相続人が各自代理人を立てて争う苦労に比べれば,おそらく安いものとなると思いますよ。

  • そうですね。ご本人が気付かない点、知識として持ち合わせない点について助言させて頂くのが専門家の役割の1つですし。

  • 弁護士アンとはいえ,相続人間で十分に遺言者の死後を想定しているケースでは,紛争は少ないのではないかと思います。したがって,遺言を作成した後,その内容を相続人間で共有し,各相続人の納得を得られればベストです。

  • まさに、遺言のあるべき姿ですね。

  • 弁護士アンまた、遺言の存在を知らせることで紛争が発生してしまうのではないか、とご心配される方もおられると思いますが,生前に知らせて紛争が生じるのであれば,死後に発覚すればなお一層問題が大きくなるのではないかと思います。

  • いや、まさに、そうですよね。でも、どうしても、先に紛争が発覚するのを恐れてしまうのが、常だと思います。

  • 弁護士アン確かに、お察しします。しかし、ここで注意が必要なのは,相続人「全員で」共有することです。意図せず,長男には長男に有利な話を,二男には二男に有利な話をしてしまうことも。こうなると,長男と次男の思惑が対立して,むしろ紛争を誘発しかねません。

  • はい、はい、はい、はい。おっしゃるケースは、よくありますよね。私も、昨年、そんなケースの申告についてお手伝いさせえて頂きました。死人に口無しですが、お仏壇の前に座って、本当のところ、どうだったのか、お尋ねしたくなります。でも、なかなか、自分が元気な間は、そういう事は言い出しにくい、なんて話をよく聞くんですが。

  • 弁護士アン周囲に相続の話題を出すことを躊躇している方もいますが,周りは「あなたが死んだら・・・」とはなかなか言えません。ですから,相続を考え,遺言を考え,相続トラブルを未然に防ぐのはあなたの役目です。あなたが,相続について気になりだしたときが,相続対策に向けて動き出すシグナルだと思いますよ。

  • うわぁ〜、なるほど。これは説得力のあるお話を頂きました。気になり出したらGoサイン、ですね?

  • 弁護士アンはい、その通りです。もっと言うと、遺言はいつでも書き替えることができます。むやみに何通も作成することはオススメしませんが,遺言により達成したい目的があるならば,あと20年生きられると思っていても,ひとまず遺言を作っておいて,自分が長生きできれば書き替えるということも可能です。

  • 確かに。遺言は、後に作成したものが有効でしたよね。そうすると、少なくとも、自分に意思判断能力があるうちは、何度書き換えたとしても、最新のものが有効ですね。

  • 弁護士アンそうなんです。先程も遺言が無効になることだってあり得るというお話しをしましたが、それこそ、認知症になってから遺言を作成すると、場合によっては無効となるケースがあります。長生きする自信があっても,早目に行動に移すことをお勧めします。

  • 高齢化社会ですものねぇ。

  • 弁護士アンはい。特に女性が長寿なので,不幸な話ですが,財産を渡すつもりだった息子さんが先に亡くなることもあります。場合によっては相続の順番が入れ替わることも想定して検討して下さい。

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