相続税における生命保険の優遇
〜生命保険金の非課税枠について〜
梶まず、Dr.イエローさん、我々税理士の立場で生命保険というと、生命保険金等の非課税、の話が出てきます。死亡保険金について、非課税枠が法定相続人の数×500万円ある、というものですが。この話題については、ご存知でない方は、あまりいないのかぁ、と思っています。その辺、日常保険に携わられる立場として、どうお考えですか?
Dr.イエローはい、仰る通り、相続税対策における生命保険活用術で最もメジャーな方法に「生命保険金の非課税枠」活用というものがあります。 しかしながら・・・あなたのご家庭は、この非課税枠を使えるのでしょうか?よく、こんな問いかけをさせて頂きます。
梶使えるのでしょうか?・・・ですか?法律上は、相続人であれば適用できることになっていますが・・・。
Dr.イエローあ、いえいえ、そういう事ではないんです。相続対策にしっかりと生命保険を活用できていますか?とお客様に問いかけると、たいていの方は、 「モチロンです。ちゃんと非課税枠分の生命保険に入ってるから大丈夫」 そうお答えになります。 「・・・では、保険証券をご覧ください。保険名は「〜定期付終身保険」となっていませんか?」 そんな風にお尋ねすると、突然不安そうな表情をされ 「え?生命保険であれば、何でも良いんじゃないの?」 と、ゴソゴソと保険証券を出してこられます。つまり、皆さん、生命保険に加入すれば、それで大丈夫と思われているんです。
梶え?え? 私もむしろ、その大丈夫っていうクチですが、一体何がダメなんですか?
Dr.イエローこの商品の死亡保障は「定期型」・・・保障期間が定まっているのです。 死亡保障期間中に万が一があれば手厚い保障を得れるのですが、この商品はいわゆる「掛け捨て」です。保障期間を過ぎればそれまで支払った保険料は返ってきません。
梶あぁ、そっか。当然、生命保険が下りなければ、非課税の適用もありませんもんね?
Dr.イエローはい、その通り。最近の傾向でこそ70歳満了、75歳満了のタイプが増えましたが、過去に販売されていた商品の多くが60歳、65歳で保障期間満了となります。
梶65歳なんかで保障期間が終わっちゃったら、今から第二の人生が始まるのに、一体何のための生命保険だったのか、って思いますよね。
Dr.イエローですから、加入することに意味があるのではなくて、どんな保険に加入しているか、という点にご注意頂きたいんです。
梶なるほどねぇ。まぁ、でも、変な話ですが65歳までに万が一のことがあれば、それはそれで問題ない訳ですよね?
Dr.イエロー確かにそうです。しかし、ここでお考えいただきたいのが、被保険者が何歳で亡くなるか、という可能性の問題です。
梶日本人は平均寿命が長いですもんね。でも、平均よりも早い場合が何パーセントか、なんていうことは、全く知らないです。
Dr.イエローなるほど。では、60歳で亡くなる可能性は何%くらいあると思われますか?
梶60歳までですか?確かに随分と若くして亡くなるケースですよね。でも、現代では、三大疾病や交通事故もありますし、逆に昔よりも可能性は増えているんじゃないですか?
Dr.イエロー統計上、日本全体で60歳までに亡くなる確率は5%程度、65歳まででは7%程度と言われています。言い換えると、60歳になるまで95%の確率で生存される、ということなんです。
梶95%の確率で生存する、と言われると、かなりの確率で大丈夫なんだ、と思いますよね。
Dr.イエローそうでしょ?これが60歳満期の定期保険に加入されてるとした場合、「95%の確率で保険料が戻ってこない」とも言えます。
梶あ、そういう事になりますよね。当然ながら非課税枠も使えずに終わる訳ですか。
Dr.イエローはい。折角、生命保険の非課税枠を活用する目的で加入したにもかかわらず、定期保険では対策にならない可能性が多分にあることがお分かりでしょう。
梶保障期間ですね。確かにこれまで、あまり気にして来なかった盲点でした。では、死ぬまで保障、っていう保険に加入すれば良いんですか?
Dr.イエローそうですね。この場合の正解は「終身保険」。一生涯の保障がウリの生命保険です。これなら、年齢に関係なく非課税枠を活用することができます。当然、保険料も高くなりますので、そこは、本当にこの方法が適切なのか、という事を、是非専門家にお尋ね頂きたいと思っています。