生前贈与ってどうやるの?
まず、よく言われる生前贈与。じゃぁ、生前贈与について、不動産賃貸業ではその賃貸実績には輝かしいものがある「満室大家」さんにご参加頂き、話を進めて行きたいと思います。
梶早速、満室大家さん。まずは、生前贈与で関係ないところからお尋ねしたいんですが、ご自身のアパート・マンションって、どういう管理をすると満室になるんですか?
満室大家いやぁ、必ずしも満室になる、という訳じゃないですよ。私だって。満室を目指しましょう!っという程度で。でも、一つ言えるとしたら、入居者のこと、お客さんって呼んでみませんか?
梶え?入居者を「お客さん」ですか?
満室大家そうなんです。入居者、いや別にそれでもいいんですが、アパート・マンション経営を不動産賃貸業と思わないようにする、ということなんです。
梶はい・・・。え?益々わからなくなってきました。
満室大家私達は、住居を提供するサービス業です。ハコを貸して家賃をもらう、もうこんな時代は終わりました。そんな考えだったら、家賃を下げて満室にすればいいんです。でもローンがあったり、そうも行かない事情がある訳で。だったら、どうしてもっと本気で賃貸業をしないのか?って思うんです。
梶そ、そうですねぇ。ちょっと熱すぎて、生前贈与のコーナーでは語り尽くせないようです(笑)。では、話題を戻して、ここでは生前贈与についてお話しを伺いたいと思います。まず・・・、お見かけすると満室大家さんも、そろそろご自身の相続、というものを考えられるご年齢にあるように思いますが、いかがですか?
満室大家そうなんです。今日は、それを聞きに来たんです。私は、もうすぐ70歳になります。息子が2人、娘が1人おります。あ、モチロン家内もね。家内は、年は5つ下ですし、当然私よりも長く生きるだろうと思っています。子供達は既に独立して家庭を持っています。長男は自営業を営んでいて、ウチの物件に住んでいます。つまり、すぐ近くにおります。次男は一般企業に勤めており、今は東京で暮らしております。娘は嫁いでおり、嫁ぎ先でも、やはり同じように賃貸業をしていて、どれほど戦力になっているかわかりませんが手伝っているようです。
梶なるほど。お子様も皆さんそれぞれのご家庭をお持ちなり、親御さんとしては申し分ない、そんな状況ですね。
満室大家いや、まぁ、その点はそれでいいんですが。最近、私も入院したりするなどして、やはり自分の亡き後、ということについて考えるようになりました。
梶ほう。それで、どのように?
満室大家やはり、長男はすぐ近くにいてくれていますし、私が入院している間は、賃貸業のことなど少しは手伝ってくれていたようで、将来的にも、大きなくくりで不動産は長男に任せて行きたいな、と。
梶なるほど。では、概ね、どなたが不動産を引き継がれるか決まってきた、ということですね? ところで、金融資産はどうですか?株式とか保険とか。
満室大家株は、少しですがやっています。少しでも勉強になれば、と。あと、投資信託と。勿論、生命保険にも入っています。
梶さぁ、そこで、相続対策が必要な満室大家さんですが、何か実行されていることでもありますか?
満室大家ええ、まぁ。家賃収入として入ってきたお金の一部を、長男に贈与しています。
梶それは素晴らしい。で、一体、どんな方法で?
満室大家方法、ですか?いや、単に、息子名義の口座に毎月自動送金で振り込んでいるんですが。
梶自動送金ですか。で、その息子さんの口座の通帳は、満室大家さんが持っている、とかそういうことはないですよね?
満室大家通帳は息子が持っています。でも、印鑑は、まだ私が持っているんです。
梶え??じゃぁ、その口座は、普段お使いでない口座ということですか?
満室大家はい、恐らく。息子も、たまに通帳記入して残高がどれくらいか見ている程度だと思います。
梶う・・・・ん。それは、あまり良い状態とは言えませんねぇ。
満室大家良い状態でない?
梶はい。だって、息子さんは、その預金を自由に使うことができない訳でしょ?
満室大家ええ、まぁ。でも、それは息子名義なんですよ?
梶名義は何であろうが、関係ないんです。それは、お財布の色が違うだけ、と思ってください。中身は満室大家さんのもの。大切なのは、本当にそのお金が息子さんのモノだと言え、かつ息子さんが自由に使用することができるものでないと、そもそも、贈与契約自体が成り立っていなんじゃないか、ということになるかもしれません。
満室大家なんだか、難しい話ですね。つまり、今のままじゃ、ダメだと。
梶断定はできませんが、その可能性は高いですね。贈与ですので、満室大家さんにとっては、息子さんにあげた、という意思が必要であると同時に、息子さん側にも、もらったという意思が必要です。その上で、息子さんが自由に使えることができる状態で初めて、生前贈与となります。
満室大家なるほど。使い込まれたらどうしよう、と思ってしまって、印鑑はこっちで持ったままでした。
梶確かに、若い内から、多額のお金を手にすることは、その人のために良くないことも多いですね。では、お金とは別に、不動産の生前贈与はいかがですか?
満室大家いやぁ、まだやったことがないんです。多額の贈与税が必要になりそうで。
梶そんなことはないですよ。税負担が嫌なら、極端な話、基礎控除の110万円に沿うような程度で贈与をすればいいんです。
満室大家 いや、でも、ウチの土地は1筆が2千万円とか3千万円とか、大きいんです。これを110万円の価値に区切って分筆しようとすると、結構費用がかかってしまうでしょ?
梶いや、別に110万円ずつ細切れに分筆する必要はないんです。権利の割合として、例えば10%とか50%とか、持ち分で贈与すれば、何も問題ないんです。
満室大家そんなこと、できるんですか?分筆もせずに、細切れに贈与していくことが。
梶勿論!でも、共有という状態ですので、共有者全員の同意がなければ、例えば土地であれば、建物を建てたり、売ってしまったりすることはできません。
満室大家まぁ、その点は心配ないと思います。売るつもりはありませんし、建物も既に建っていますので。でも・・・その贈与する割合って、どうやって決めるんですか?
梶そうですね。そういう疑問が湧いて当然です。では、例えば1筆が1千万円の土地があったとしましょう。これを、贈与税をかけずに贈与していこうとすると?さぁ、何年かかりますか?
満室大家贈与税がかからないのは、110万円までの贈与ですよね?っであれば、9年、いや10年たてば、1千万円分の贈与ができる、ということですね?
梶そうそう。わかっているじゃないですか。でも、ここで考えて欲しいのは、贈与税の基礎控除110万円の範囲内で贈与するのが、本当に良いのか、ということなんです。
満室大家良いのか、って、贈与税がかからないから、良いんじゃないですか?
梶確かにそうですが、あまりに時間がかかり過ぎると、その間に相続が発生してしまい、道半ばで相続税申告をすることになります。要するに、相続まで待つのか、今贈与するのか、という判断です。相続と贈与、少しでも得する方を選べば良いわけですので。
満室大家なるほど。でも、その得する方って、どうやってわかるんんですか?この辺までなら、贈与がトク、そんな損益分岐点がわかれば、贈与計画を立てやすいですが。
梶要するに、今の資産背景で相続税の負担がどれくらいか、という試算をまず行います。そして、例えば300万円分の贈与を実施するとします。すると、相続財産からは300万円分の土地が減りますね?この状態でもう一度相続税の負担がいくらになるか計算します。贈与する前と後と、相続税がどれくらい減るのか、確かめることができますよね?この金額と、実際に贈与を実施した場合の贈与税を比較するんです。相続税の差額の方が多ければ?贈与した方がトク、逆に贈与税の方が多ければ、相続まで待った方がトク、とこうなります。
満室大家うわ〜、ちょっと難しい話ですね。ま、ま、贈与した方が良いか、相続まで待った方が良いか、贈与金額を色々変えてみて、どちらがトクかの分岐点を探る訳ですね?
梶あぁ!スゴイ!飲み込み早いですねぇ〜。その通りです。
満室大家でも、その計算って、結構大変ですよね〜。1個1個調べていくんですよね?
梶ええ、まぁ、皆さんが手計算する場合は、そうなります。あと、もう1点注意すべきところは、不動産の場合、贈与した場合と、相続した場合と、同じ不動産であっても、登録免許税や不動産取得税が異なってきます。
満室大家え?え?まだ、他に税金があるんですか?
梶はい・・・残念ながら。しかも、税率が異なる、と。
満室大家いや〜もうそれは、自分では計算できないです。
梶もし、不動産の場合が難しければ、まず相続税と贈与税だけで計算してみると良いですよ。とにかく、諦めては負けです。
満室大家ホント、そうですね。とにかく、最初にお話しになった、現状の相続税負担、これからまず計算してみます。ところで、現状の相続税は簡単に計算できるんですか?
梶はい。固定資産税評価額がわかれば、このお渡しするワークシートで簡単に計算できます。
満室大家固定資産税評価額?って、どうやって調べるんですか?
梶毎年、固定資産税をお支払いになるでしょう?その納付書と一緒に、固定資産税課税明細書というものが送付されています。ここに、書かれていますよ。
満室大家あぁ、ありますね。地番ごとや家屋ごとに、いっぱい数字が書かれているヤツですよね?
梶はい、そうです。その明細書の「評価額」などと記載されている金額を使ってください。間違っても課税標準額は使わないでください。
満室大家また、分からなければ、お尋ねして良いですか?
梶ええ、もちろん!そのために、我々、税理士がいるんです。